メンタルヘルス 感想

【感想】ブリ猫。『家族もうつを甘くみてました』(ぶんか社)

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こんにちは、ヤチヤチルです。

今回はブリ猫。著『家族もうつを甘くみてました』というコミックエッセイの感想です。

ブリ猫。さんは以前『うつを甘くみてました』という患者目線での闘病マンガを出版しており、『家族もうつを甘くみてました』は家族(支援者)目線での闘病マンガとなっています。
(※『うつを甘くみてました』の感想はこちらから)

『家族もうつを甘くみてました』もイチ事例

冒頭部分の「#はじめに」で次のようなことが書かれています。

うつを抱える患者とその周りの環境はさまざまで、決して皆さんに当てはまるものではありません。でもこの家族のすったもんだが、イチ事例として誰かのお役に立てれば幸いです。

(p4. 太字装飾は引用者)

当たり前ですが、闘病記って「イチ事例」でしかないんですよね。
ブリ猫。さんのような境遇が当たり前ではなく、かといって私含む読者の環境が当たり前という訳でもなく。

この世に万人に当てはまる闘病記などありません。
ここは自分と全く一緒!、けどここは当てはまらないぞ……ということが多々あるでしょう。
闘病記は、そのことを念頭に入れて読み進めた方がすんなりと受け入れられると思います。

助けること、寄り添うことの難しさ

思っていた以上に
助けること
寄り添うことは
難しいのよ…

(p82)

読み終わって一番の感想は、手探りの段階では家族もいっぱいいっぱいだったろうな、ということです。
疾患の治療は患者が中心となるのでつい見過ごされがちですが、家族(健常者)であろうと心身ともに限界があることを忘れてはいけません。
うつ病や双極性障害などという(患者ですら)訳のわからない病気が理解できなかったり、長く看病が続くとイライラしたりすることもあります。

作中でも家族が困惑したり、イライラしている様が描き出されています。
ブリ猫。さんのお父様は理解には”時間”が必要だったとコラムの中で語っており、支援するに当たって陰口も叩いていたとのこと。

前作でも今作でも悪人に映るように描かれているブリ猫。さんの(元)旦那さんですが、彼は彼でつらかったと思います。
症状の激しい患者と直に向き合うのは甘いものではありません。
また、パートナーと親では関係が違うというのも、つらさを増大させています。

話は逸れますが、私の知人にも、障害を持ったお子さんを持つお母さんがいます。
お子さんの症状に振り回されて、冷静でいられなくなったときに、医師から「このままではお母さんがどうにかなってしまいますよ。まずは自分の身を大切に」と言われたそうです。
自分の苦しさを認めてくれたその一言で救われた、と私は聞いています。

助けること、寄り添うことは綺麗にいくものではないのです。

患者(疾患)との適切な距離感

責めても
煽っても
何も
変わらないし
進まないのです

(p102)

患者(疾患)との距離の取り方というのは多分多くの人が悩むのではないでしょうか。
『家族もうつを甘くみてました』では、患者に対して赤ちゃんを相手にしているかのように対応するといい、と主治医がアドバイスしています。
家族の生存戦略だとしても、個人的には(患者としては)ちょっと悲しいですが……(以前母に、赤ちゃん返りしたと思うようにするわ、と言われた経験有)。

何にせよ、引用したように責めても煽っても患者に良いことはありません。
とはいえ、支えている家族だって愚痴のひとつも言いたくなります。
ブリ猫。さん一家もチェック方式のメモ交換を利用してコミュニケーションを模索したり、ブリ猫。さんでもできることはやらせるようにしていたそうです。

患者に優しく、自分のストレスも極力少ない距離感を目指したいものですよね。
この距離感が正解!というものはないですし、たとえいい感じの距離感を見つけたとしても、時間が経つ(病状が変化する)に応じて理想の距離感も変化します。
こればかりは時間が必要で、とことん試行錯誤するしかないでしょう。

家族はどこまでしなければならないのか?

家族は最大の味方
ですからね!!

(p92)

ブリ猫。さんのご両親(と、お子さんたち)はブリ猫。さんの治療に非常に協力的で、山あり谷ありながらも、ブリ猫。さんの回復の助けになったという印象を受けています。
では、家族は必ずしも患者を支えなければならないのか?それはどれほどの範囲でなのか?

一般的には、家族は家族の構成員を助けなければならないと言われているでしょう。
私もどちらかといえば、家族は支えあうことが望ましいと考えています。
しかし、果たして、全ての家族にそれが当てはまるのか?

『家族もうつを甘くみてました』では、ブリ猫。さんを支えきれない登場人物がいます。
ブリ猫。さんの(元)旦那さんです。

発症のきっかけとなる浮気をしたり、過呼吸でも手を差し伸べない等、控えめに言っても最低です。
かといって、回復の支援という点では彼を全面的に責めはできないんですよね。

家族の病気についてなかなか理解できなかったり、受け入れられないというのは往々にしてあります。
ブリ猫。さんの(元)旦那さんもそうだったのではないでしょうか。
これは、その人の心が弱いとかではなく、社会経験や生育環境など、もっと複雑な要因が絡んでくるので一言で何がそうさせている、とは言えません。

さて、病気の家族に対して理解や受容がなかなかできないとき、人は自分を責めがちです。
でも、自分を責めるほど追い込む必要はないですし、患者である家族もそれは望んでいないでしょう

世間は責めるかもしれませんが、もし家族を支えきれなくてもそれは無理もないことである場合がありますし、支えたくても無理のない範囲で支えないと共倒れになってしまいます。
家族とはいえ、できることは限界があり、医療者などと協力して患者を支えていくのが望ましいでしょう。

家族からの視点ではっとさせられた

ブリ猫。さんというフィルターがあるとはいえ、家族からの視点が生々しいほどに描かれていました。
いつも患者視点である私としては、はっとさせられるところが多かった一冊でした。
また、私には私と同じく双極性障害である妻がいるので、その妻を支える、という観点からも非常に勉強になりました。

”当事者”には是非とも手に取っていただきたい本の一つです。

以上、ヤチヤチルでした。

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管理人のヤチヤチルです。
双極性障害(Ⅱ型)。手帳2級。
同病の妻と手を取り合いながら暮らしています。
【経歴】
東京大学大学院卒。
IT系企業に就職。1年半で休職、2年で退職。
現在Webライター。
お仕事は、問い合わせ or TwitterのDMにて。


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